庶民の仏教批判

タイにはかつて、311もの戒律を守る女性僧侶(ビクニ)もいました。

しかし、ビクニのサンガは消滅しました。

そのため女性の入門を許可する権限を持つ人がいなくなり、現在のタイには、女性の僧侶はいません。

しばしば女性僧侶と誤解されるのは、メエーチーと呼ばれる女性修行者です。

彼女らは白衣をまとい、庵を結び自主的な宗教活動をしています。

しかし、彼女らは厳密には単なる在家信者でしかなく、戒律も在家信者と同じ五戒ないし八戒だけです。

僧侶になれない女性にとっての最大の功徳は、その子を僧侶にすることです。

『黄色の衣』という本がひそかに読まれています。

信仰心の厚い老母が仏教を批判するようになるという、タイでは珍しい仏教と社会に対する批判の書です。

老母は、お寺と僧侶に喜捨をし、子供を僧侶にすれば幸せになれるとする教えを信じていました。

乏しいお金を寺に寄進し、息子が僧侶になる日を夢みていました。

仏教に疑問を持ちはじめた子は、寄進などやめろと母にいいます。

それでも母は、将来と来世のためにと喜捨にはげみます。

しかし不幸は重なり、ささやかな寄進にさえ苦労するようになります。

信じても喜捨してもなんにもならないのか・・・。

絶望感が襲います。

僧侶に相談しようとしました。

しかし、僧侶は村の有力者には声をかけますが、わずかな寄進しかできない貧しい母には見向きもしません。

高名な僧侶が村に来ましたが、彼も貧乏な親子には冷たくします。

ついに、母はいいます。

「お前のいう方が正しいようだ。もうお前の黄色い衣にすがって、来世を楽しむことは考えない」。

仏教を否定することは国体を否定することと同じと考えられているタイで、こうした本が発売され、一時はベストセラーにもなったのです。

『黄色の衣』は仏教に対する基本的な批判であり、仏門にはいることへの疑問の提示でもあるのです。

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