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2010年06月 アーカイブ

庶民の仏教批判 その2

僧侶の意識の変化にともなって、仏教に対する庶民の音議も変わりつつあります。

最も大きな変化は、男性は一生に憂は仏門に入るというこれまでの考え方が著しく少なくなったことでしょう。

30万人という僧侶の数は驚くべきものでしょう。

しかし、この数字は過去十数年ほとんど変わらず、男性総数との比較でいえばかなりの低下となっています。

仏教に対する意識の変化だけでなく、出家にさいしてのコストの上昇も背景にあります。

出家することは戒律を守ることです。

そのため、出家の前後に戒律破りをともなう盛大なお祝いが行われます。

こうしたコストは、特に都会ではきわめて高くなってきており、よほどのスポンサーがいなければ難しくなってきています。

もう1つの理由は、還俗したときの尊敬の度合いです。

かつては、出家したことのない男子は未熟者(コン・ジィブ)といわれ、サンガ経験者(熟した者、コン・スックには特別の尊敬が払われていました。

しかし、最近、そうした取扱いはきわめて少なくなりました。

仏門での経験より学位であり、実社会での経験だという時代になっています。

サンガの自己変革の試み

上座部仏教の無変化性を強調しすぎたかもしれません。

仏教集団としてのサンガが、多くの挑戦を受け、自己変革を行おうとしてきたことも事実です。

もっとも大きな外部からの挑戦はキリスト教からのものでした。

19世紀半ばにキリスト教宣教師が来タイしましたが、彼らにとって「仏教とは偶像を礼拝する異端の宗教であり、これを信奉するシャム人はいわば未開野蛮の民」でした。

こうした見方に対して反論を加えたのがモンクット王でした。

王は英語での手紙で「我々は道理と礼節を知っている。たしかに宗教としてはバラモン教や未開宗教との習合が見られるが、明快な道理にかなった称賛すべき宗教である」と書き、仏教を援護し、国民のレベルの高さを欧米人に訴えようとしました。

それだけでなく、タマユヅト(法に忠実なるもの)運動と称された、仏教改革運動を起こしたのです。

タマユット運動は、要するに、戒律を守り、伝承されてきている教典の「浄化」を行おうとするものであり、もう一度ブッダの教えに戻ろうという精神からの運動でした。

在家信者のために和讃に似た唱えやすい歌をつくり、仏教の教えを大衆に宣教しようとしました。

西欧合理主義からの挑戦に対しては、仏教の科学的接近だけが回答になろう、という判断からの改革運動でした。

父モンクット王のタマユット運動を記念して、チュラロンコン大帝が仏教学校を創設したのは1893年のことでした。

仏…におけるエリート養成を意図するものでした。

1946年には大学も併設され、やがて卒業者には学士と同一の資格も付与されるようになりました。

仏教の普及を積極化させるだけでなく、公衆衛生や健康管理などの科目を履修した僧侶を地方に派遣し、地域での指導者的役割を果たさせようとしたのです。

かつては寺院が学校の役割を果たし、僧侶は農民の相談役であり、精神的指導者でもありました。

しかし、世の中の変化はいつの間かサンガと庶民の距離を広げ、国家的支持なしには存続できないほど大きくなりすぎたようです。

1902年以来、何回か改訂されたサンガ統治法は、サンガ行政区画の設定やサンガの長を罷免する権利を国王に与えるとするなど、国家権力への従属を定めるものとなっています。

庶民からの距離は遠くなり、国家への依存度を高めるサンガ、それが現状です。

つまり、タマユット運動や大学の設立などによる自己変革への努力はありましたが、それらも変わらざる仏教と変わりゆく僧侶の意識という路線からはずれることはできなかったのです。

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